
>当社とお客様をつなぐニュースレター「いい家情報局」で4回にわたってシリーズで取り上げてまいりましたリアル古民家居酒屋「もんしち」さんの移築再生工事、完成を記念して、今回は、曳家による移築再生を断行された「もんしち」さんの社長と、その要請を受けてシン「もんしち」を完成に漕ぎつけた保川建設の社長のお二人からお話を伺ってまいります。どうぞよろしくお願いします。
>紋七さんは林社長でよろしかったでしょうか?
-- 林紀子㈱紋七代表取締役社長

はい、代表取締役の林紀子です。生まれも育ちも茂原で、ここが私の生まれ、育った家でした。今、27歳の子どもが一人おりまして、ここでいっしょに働いてます。
私は高校卒業してOLやって、その後、専業主婦となって30歳の時にこの「もんしち」を引き継ぎ、40歳の時に株式会社紋七の代表取締役社長になって今年でちょうど10年。さらに、会社も今年50周年、私も生まれて50周年。いろいろな節目が重なった年が今年なんです。そういう年にこのようなすごい大工事に巡り合って「もんしち」が生まれ変わる、すごい年だなあって思っています。
>それとこちらがサーフィンのお師匠さんの山口亮代表取締役ですね。
-- 林社長
そうです。私が師匠師匠っていうものだから、うちのスタッフみんなも師匠って呼んでます。

-- 山口代表取締役
私、茂原には縁もゆかりもなくて、たまたま林さんと知り合(ってしま)いまして、それまで全く関係ない仕事をしてたんですが、紋七の話で林さん一人じゃやりきれないんじゃないかなってことで、いろいろと外から助言をしてたんです。そんなことが3年ほど続いていたんですが、外からじゃ追いつかなくなって、じゃいっしょにやろうかってことでこういう形になりました。ただ、元々は店に出るつもりはなかったんですが、スタッフが少ないし、自分もやらないと回らないかなということで店にも出るようになったわけです。なんか、初めてバイトに来たみたいな(笑)。まあ、料理以外は大体はなんでもできるし、やりますね。
>50周年ということは1972年創業ということですね。
-- 林社長
そうですね。父と母、当時まだ健在だったおばあちゃんの3人で始めて次第に板前さんが一人二人と入ってきてという感じだったんです。今はもうわからないでしょうけど、この古民家、実は自宅だったんです。で、商売はその隣にあった小さなお店で始めたんです。
今のこの古民家は、先祖代々、家族が住む住宅だったんです。私も小学校上がるまではここに住んでいました。ただ、お店もだんだん手狭になってきて、小学校上がるぐらいの時に住む家を別に建てて、この古民家をお店にしようということになったんです。創業当時は高度経済成長期にさしかかる頃で、また、この周辺で海鮮を生け簀から出すお店がなかったみたいで、最初に始めた小さなお店はものすごく繁盛していて、手狭になったようです。それで自宅だったこの古民家を改装してお店にしようって父の発案で始めました。45年ぐらい前のことですね。
>300年というとこの辺ではいちばん古いのでは
-- 林社長
そうですね、300年前だから江戸時代中期になりますか、駅より何よりうちがいちばん古いですね(笑)。
>今までの保川建設の建築事例には「紋七」という名前が出てこないんですが、保川さんとはどういう関係だったんですか?
-- 林社長
両親同士が知り合いで、社長が小さな頃からうちにご飯食べにきたりね。
-- 保川社長

私が小さい頃は家族で食事に行くと言ったらファミレスとかじゃなくて、「紋七」でしたね。でも確か当時はファミリーレストランって書いてありましたよね。
-- 林社長
そう、レストランもんしちでしたから。
実はうちの父と神明建設さん(保川建設と同業の茂原の工務店さん)、ヨシモクさん(茂原で老舗の材木会社=いい家情報局Vol46でも取材済み)とは同級生なんですよ。だから、ちょうど20年前に前の場所の店をリニューアルしてるんですが、その時は神明さんにお願いしてやってもらいました。
-- 保川社長
みんな同級生つながりなんです。
>今回の移転・再生のきっかけはどのようなことだったんでしょうか?
-- 林社長
茂原市の都市整備の関係で移転しなければならなくなったんです。これがいちばんの、直接的なきっかけなんですが、ちょうどその頃、新型コロナ感染症が蔓延し出していたんですね。正直、それまでお店は順調で、結構はやっていたんですが、やっぱり大変な状況になってしまいまして、そんな時に移転を決断しなければならなくなったんです。それでこの飲食自体を続けるのか、やめるのか、というところまで突き詰めて考えたんです。50年を節目にやめるのか、50年を節目にまた蘇らせるのかって、ものすごく悩みました。
それで思い出したのが、20年前に自分がこの店を引き継いだ時の気持ち、この家を無くしたくないという気持ちだったんです。さらにその前に頭に浮かんだことは、父がなぜこの家を使って飲食店を始めたかっていうそのわけだったんです。父はこの家を無くしたくなかったんです。
つまり、これまでは「家を守る」という考えがずうっと続いてきた50年だったんですね。それと、もう何十年と通い続けてくれる常連さんの存在、そしてこれまでずっと頑張って働いてきてくれた何十人、何百人のスタッフさんたち、そういう人たちの思い出の場所がなくなっちゃうというのも嫌でしたし、よし、それならまだまだ頑張ろうって思ったんです。移築再生という壮大なスケールの話だったんですが、そこに師匠(山口代表取締役)が来てくれたんで、やる勇気が出ましたし、もう1回やろうよって言ってくれたんで、前に進む決断を下すことができました。
>そんな中、保川社長との接点はどのあたりにあったんですか?
-- 保川社長
茂原商工会議所の青年部の繋がりですね。
-- 林社長
それ以前から知っていたんですが、なかなか深くお付き合いすることはなかったんです。でも、青年部に入っていろいろいっしょにやることが多くて付き合いも深まりましたね。でも正直なところ私の中では、古民家っていったら絶対に保川さんだなって決めていたんですけど。保川さん、保川さんってずうっといってましたよ。ましてや曳家なんていったらできる会社なんかそうありませんので。山﨑組さんと保川さんのコンビネーションでやっていただけたので、ほんとにありがたかったです。
>保川さんにとっても規模の大きな再生工事だったのではありませんか?
-- 保川社長
大きかったですね、しかも、私が経験した中では曳家での移動距離がいちばん長かったのではないでしょうか。しかも(直線)移動だけではなく、回転もさせましたし。いちおう全部やりましたから。

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>新築するのと、こういう移築再生するのとでは費用の点でもかなり違うんじゃありませんか?
-- 林社長
そうです、莫大に(笑)。だけど、お金をかけてでもやらなきゃいけない、まあ、ミッションみたいなことですし、ひとつのチャンスなんだというようにも考えました。つまり、ここで投資して、しっかりした、ちゃんとした建物に作り直すことによって、これからまた10年、20年、50年と続けていくことができればいいし、さらに、次のチャレンジにもつながるかなと思ったんです。実際、今回これまでやりたかった宿泊施設もこれをチャンスにつくり、新たにチャレンジさせてもらうようになりました。あとは場所的に駅からすぐ近いというところで、こんな建物があることをいろんな人に再認識していただいて、ここを拠点にいろいろな物や事がつながっていけばいいなって。まあそれでこのような考え、「つなぐ」をこの店のテーマとしたところでもありますが。
>その「つなぐ」というテーマはもともと林社長のお考えだったんですか?
-- 林社長
そうですね、はい。私、千葉が大好きで、ずっとここに住んでいて、ずっと飲食業をやってますので、いろんな方と知り合うことが多いんです。そんな中でうちのテーマとしてやってきたことに、生産者さんの顔が見える材料をお客様に提供したいっていうのがあったんです。それでこの周辺の生産者さんに直接お会いして、仕入れて、それを調理して、形にして、付加価値をつけて提案していく、こういう仕事をずっとやってきたんですが、今回はそれを強化してみようと考えました。

例えばこのカウンター席。カウンターにしたいってずっと思っていたもので、今回はチャンスだと思い大きなカウンター(厨房をぐるりと取り囲むカウンター)をつくり、お店の考え方を直接お客様にお伝えしようとしたんです。
今までは150席もある大きなお店だったんですが、150席を埋めるとなるとやることが限られてしまって、料理の良さ、お店の考え方とかをお客様に伝えきれないことがありました。それで今回はそこをコンパクトにして、凝縮して、ちゃんと伝えられるものをつくろうと、このような形にしたわけです。
-- 保川社長
前のお店が150席で、今が50席から53席でしょうか。
-- 林社長
そうですね。それで半分がカウンターなので、調理人がお客さんに直接お料理の説明をしたりとかできるようにつくりました。
>このようなお店のデザインアイデアというのは
-- 林社長
私はずーっとカウンターをやりたかんったんです。
-- 山口代表取締役
そうですね、これに近いつくりのお店があって、こういうのできるといいねって話し合って、保川さんに相談したら、それだったらできるんじゃないと言われて始まったんですよね。
-- 保川社長
結構でも捨てていかなければならないものってありましたよね。アイデアがいっぱい詰まっていたもので(笑)。
-- 林社長
このカウンターは左官業界で話題の新しい材料が使われているらしいんですが、同じものが使われているいろんなお店を見に行って、自分が実際にそのカウンターに座ってみて、そこに置かれた素材の感じとか、全体の雰囲気とかっていうのをすごく気に入って、これは絶対使いたいねって師匠と2人で思いました。

それでお風呂も、お店の床も同じ材料を使ったんですが、すごくいい感じです。新しいのにどこか懐かしくって古民家にすごくマッチするんです。
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色も渋いでしょう。テーマでは同時に千葉の自然も表現したかったので、この部屋(インタビューをさせていただいた特別室)は金色と赤で太陽をイメージして、向こう(お店に入ってすぐのメインカウンターのあるスペース)は全部青で千葉の海を、その隣り(座敷)は茶色にして千葉の大地を、そして宿泊部分は緑にして千葉の森を、というように色分けして千葉のイメージを表現しようと考えました。
>で、こちらは特別な部屋ということで、
-- 林社長
そうですね、完全個室ということで接待とかに使っていただくようにしました。ここのテーブルは自分たちで和紙を貼り付けて仕上げました。壁も和紙を貼っているんですよ。あとあちらのカウンターの下の腰板は柿渋を塗ったりとか、新しい素材と日本古来の材料を融合させてね、これも「つなぐ」というテーマに結びつくのかなって。
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後編に続く>
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保川建設株式会社
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住所:〒297-0063 千葉県茂原市長谷1074-1番地
TEL:0475-23-3688
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