保川建設株式会社

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Topicsお知らせ

2017.08.23

社長インタビュー ㈲林繁瓦工業 林光一社長

インタビュー

敷地がずいぶん広いですね。

今はもう焼いてはいませんが、私が中学生の頃まではここで瓦を焼いていて、工場が建っていたものですから。

 

創業どのくらいなんでしょう。

家業は私が3代目なんです。私のオヤジは94歳で、その前からですから創業100年以上にはなりますね。100年以上もずーっとこの同じ場所で瓦屋です。さっきも言いましたが、もう瓦は焼いていません。今は、100パーセント三州から仕入れています。
三州は日本一の瓦産地です。関東の瓦と言えば群馬県藤岡ぐらいしかないんですが、ま、需要も最盛期の3分の1ぐらいに減っていますし、メーカーもどんどん減っています。石油ショックを境に三州でもメーカーさんは3分の1くらいに減っています。

*三州瓦は愛知県西三河地方などで生産される粘土瓦で、石州瓦(島根県)、淡路瓦(兵庫県)と並ぶ日本3大瓦のひとつで、生産量日本一を誇っています。

 

業界の今後はいかがでしょうか?

先日あるメーカーさんの話を聞いたんですが、千葉県は建築業界そのものも特に悪いようなんですね。まぁ、先行きは真っ暗でしょう。建築業界の業績が悪い上に、瓦は長持ちするものですからね。つい最近工事した家も45年前に葺いた家ですし、その古い瓦をまた使うんですからね。なかなか新規需要は起こりませんよね。今の瓦ってのは割れたり、ヒビが入らない限りいつまでも使えます。昔の瓦は吸水率が高かったんで、冬になると中の水分が凍ったりして割れたり、ヒビが入ったりしたんです。これでいいとは言いませんが、需要は喚起できますよね。

 

洋瓦はどうなんでしょう。

洋瓦もやらないことはないんですが、あれは葺いた後のメンテナンスが大変なんです。この前、ドイツ製の瓦のメンテナンスの仕事があったんですが、欠けたから修理と言っても同じものを仕入れるのが大変でね。航空便だと高いし、船便だと遅いですしね、苦労しました。
また、洋瓦は製品の規格が一定してないんですが、お客さんはそれがいい、って言うんですね。それに対して日本の瓦は規格を守って厳格につくられていますから、製品がピシッと一定しているんです。最近の人はこういうのがイヤみたいですね。後々のことを考えると日本の瓦の方がいいと思うんですがね。それと今、家の造り(デザイン)も複雑になっていて、小さな家の割には複雑に入り組んでいたりする。そうすると瓦の傷みも早いんです。長持ちさせるにはあっさりとして、シンプルの方がいいし、使用する製品は一定しているに限るんですけどね。

 

仕事でいちばん難しいのはどんなところでしょうか?

私は仕事を始めて46年経ちます。かなりの重労働を続けてきたんですが、仕事上で難しいって言うところは、そうですねぇ、一般の住宅って言うのはそんなに難しいところはないんですが、たとえばお寺の屋根とかだと上から下に反り返っているように造られています。そうするとそこにピタッと納めるのはかなり難しく、高い技術と経験が必要になります。まぁ、いずれにしろ一人前になるには最低でも10年は修業しないとダメでしょう。
今の人は一から十まで全部教えてあげないと覚えませんし、大工さんにしても農家造りができる人は減ってますから、教える人も、教える場所もなくなってきちゃってね。技術ではないですが、このあたりも難しいところでしょうね。

 

では、面白いところはいかがですか?

残念ながら今の家ってのは職人が面白いって思える家がないんですね。規格できっちり決められてますから、職人が頭を使って、工夫してって言うのがほとんどありませんから。

私が修業した親方も言ってましたが、昔の瓦は3等品くらいになるとねじれてたりして製品にばらつきがあるんですね。そうするとこれをきちっと納めるために、職人は頭を使い、工夫を凝らして仕事してたんだそうです。そして、ピッタリ納まって見栄えよくできると、満足なんです。これがこの仕事の面白味だったらしいです。今の瓦はばらつきがないので、機械的にそのまま並べていくと、最後に納まりが悪いところが出てきちゃうんで苦労するんですが、でも、この場合は頭を使ったり、工夫をしたりとはまた違う苦労になるんです。そこには昔の職人が感じていたような面白味はないですね。

それと、昔の屋根って言うのは上が開いているんです。下が狭くて上が広がっている。これは屋根を下から見上げた時に見栄えを良くするためなんですが、こういう屋根にうまく納めるためには技術と工夫がどうしても必要になるわけです。良い、悪いがすぐにわかっちゃいますからね。お寺の屋根でよく見かけますが、丸い瓦を使って納まりを調整したり、寸法をきちっと出したり、職人技を駆使しないとならないんです。あと、昔の家ってのは大工さんによっても反り方が違いますし、それぞれ個性というか、違いがあるんですね。それらに全て対応できなければいけない。厳しいですが、面白味はありますよね。

 

このお仕事でいちばんキツいのは?

瓦を屋根に上げる作業、これが重労働でいちばんきつかったですね。今は機械で屋根の上まで運び上げますが、昔は人力ですから。瓦をかついで屋根を登ったり、下りたり。私が仕事を始めた頃は2トン車2台分をひとりでかつぎ上げるんです。2400枚ぐらいでしょうか。これは重労働です。体格だって今より痩せてたんですから。そして暑い時にこれをやるのがまたひと苦労でね。以前、保川さんの仕事で千葉市の宝泉寺っていうお寺をやった時、表側は風があってよかったんですが、裏に回ると風が来ない、暑くてね。あの仕事は大変だったですね。
お寺の屋根は高くて、勾配もある。そんなところでの作業、きつそうに見えますが、さっきも言いましたが、お寺の屋根は下の方が反り返っていて、広がっているんです。だから以外にきつくはないんです。それと大きな工事だと足場がかけられていますしね。大工さんの仕事だと昔の考え方でやりますから、足場なんてないですから。結構きついです。とはいえ、足場をかけないようなやり方をする大工さんは、もういなくなりましたけどね。

 

今までで印象に残る仕事は?

そうですね、印象に残るというか、面白かったのは一宮町で大工さんの家をやった時でしょうか。屋根を千鳥にしたり、特別の鬼(鬼瓦)、オリジナルの鬼を使ったりしました。今はもう、こんな風に自分でこういう鬼を使いたいなんて言う人はいませんが。この家では将棋の駒のようなオリジナルの鬼を、鬼屋さん、鬼瓦専門店ですね、に伝えて造ってもらったんです。あまり知られていませんが、鬼瓦を専門に造っている人がいるんです。お値段はちょっと高くなりますが、自分の希望を言って唯一の鬼瓦を造ってもらうんです。でも、こうした楽しい物件はほとんど無くなっちゃいましたね。

 

ところで瓦ってどのくらい保つものなんでしょう?

瓦そのものは地震にも強くって、東日本大地震でも家が倒れていない限り瓦は壊れていないんですね。瓦の寿命で言えば、40〜45年って言うところでしょうか。私がこの世界にに入って始めた頃の家でメンテナンスをやり出しましたから。寿命もそうですが、瓦って、作られた場所、産地によっていろいろと個性があるんです。だから本当は家のあるその地方、地方で作られたものを使うのがいちばんいいんですがね・・・

 

保川建設とはどのくらいのお付き合いですか?

保川さんとはもう16〜7年のお付き合いでしょうかね。今、保川さんの古民家の現場はほとんど全部やらせてもらっています。古民家の現場では、新しいものと混ぜて古い瓦も再利用するんで、新しい瓦を古く見せるような工夫もしたりしています。

 

屋根に「林」って文字が浮き出ていますが・・・

うちは瓦屋ですから屋根が看板代わりです。で、色違いの瓦で「林瓦」と葺いているんです。会社の前の国道沿いに昔はお店とか何も無かったんです。だから外房線の電車からうちがよく見えて、いい看板になってたんですよ。

 

雨の日とか、休みの日ははどうされていますか?

この商売、雨が降ると休みです。雨の日じゃなくても休みの日は、もう、死んでますね。庭仕事とか簡単なことはちょっとはやりますが、ちょっとだけです。植木屋さんに悪いですからね。どんな仕事でもやっぱりプロがいるんですから、素人はあんまり手出ししちゃいけないと思うんです。
とにかく疲れを取るようにしていますね。疲労回復の秘策ってのは無いんですが、ま、女房に揉んでもらうことかな(笑)。あとは冷たい水を飲んで、本当のぬる湯にゆったりとつかることでしょうか。疲れた体にはこれがいちばんかな。

 

お仕事はいつ頃まで続けられますか?

私は昭和24年生まれの64歳。18歳でこの世界に入って46年になりますが、いつまで続けられるんでしょうかね。ちなみに私が教わった親方は85歳でバリバリの現役でしたから。お客さんの方が危ないなんて不安がっておられました。この親方は名人と言われるほど技術もありましたし、生粋の職人気質の人でした。仕事は教えてくれなかったですが。盗めって言ってね。ここまでできるかどうかわかりませんが、引退はまだ考えられませんね。子供ふたりも違う世界に入っちゃいましたから。


若い頃とはいえ、この方がかついで2000枚以上の瓦を屋根に運び上げたなんてウソに聞こえる程、普通の体格をされていました。きっと着痩せするタイプなのでしょう、ほんとうはがっちりとした、強靭な足腰をお持ちとお見受けしました。
(聞き手:アットホームパソコンサロン/この記事は平成25年6月にインタビューしたものです)